《MUMEI》
都市伝説の真実
そう言うとマカは踵を返し、家から飛び出した。

続いてミナも追って来る。

マカはケータイ電話を取り出し、素早く操作をし、例のサイトから魔方陣の画面を出した。

黒い画面に浮かぶ青白い魔方陣。

「私は【解放】を望む。限界からの【解放】をっ!」

マカがそう呟くと、魔方陣が赤く光輝いた。

マカはその光を眼に受けると、地面を思いっきり強く蹴った。

マカの体は二階建ての家の屋根の上に上がった。

―ぐるっ!―

するとミナも同じように飛んで来た。

マカはケータイを握り締めながら、屋根に飛び移る。

しばらくミナと走り、二人は学校の屋上までやって来た。

「ここなら誰の邪魔も入らないだろう」

そう言って、マカはミナと向き合った。

「さて、ミナ。人間としての理性を失ってまで得た【解放】の力はどうだ? 今のその姿が、お前の望んだものなのか」

―ぐっ…!―

「お前が何を思い、【解放】の力を求めたのかは私は知らないし、知らない方が良いのだろう。だが…」

マカは真っ直ぐにミナを見た。

「今のお前は私の親友じゃない」

ミナの眼が揺らいだ。

そんなミナの様子を見て、マカは苦笑した。

「今のミナは好きじゃないよ」


ミナの眼が大きく見開かれた。

―ぐっおおおおおっ!―

空に向かってほえたミナの体から、青白い光が飛び出てきた。

その光が全て抜けた時、ミナの体から力が抜けた。

「ミナっ!」

駆け寄ったマカは、ミナの体を受け止めた。

「マ…カ」

虚ろな表情だが、ミナは理性を戻していた。

やつれた顔で、マカの顔を見る。

「ゴメン、ね」

「…いや、いい。迷惑を掛け合うのも、親友の醍醐味だろ?」

「ふふっ…。ありが…と、う」

柔らかく笑うと、ミナはそのまま気を失った。

ミナの体を一度強く抱き締めると、静かに横たえた。

そしてマカはケータイ電話を見た。

「―さて、ミナは失敗したぞ? 諦めることだな」

赤く浮かぶ魔法陣に向かって声をかける。

―フフッ…。残念だなぁ―

しかしケータイ電話から、少年の声が聞こえてくる。

「雑魚食いは悪食が過ぎるぞ? そんなに空腹なワケではあるまい」

―まあね。ちょっとおもしろそうなゲームを考えたから、やってみただけ。ちょうど良い具合に腹も膨れたし、ここいらで引き上げるよ―

「人間の持つ、本能の力を食らうとはお前らしいが、選ぶ相手はあまりよくないみたいだな」

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