《MUMEI》
・・・・
 風は海となりつつある聖水を取り込んだ竜巻となり、赤い空には暗雲が尾を引き雷鳴が鳴り響いていた。無数に開かれた天の水門はあっという間にこの炎の世界を沈めていく。
 降り注ぐ大瀑布はついに海をつくり波打つまでとなった。
 それでもエリザの立っている場所だけは海が割かれ大地を剥き出しのまま、エリザは水を被ることなく凛と立っていた。
 「・・・・・はぁ、はぁ・・・」
 エリザは凛と立つものの、呼吸は浅くどこか疲弊している。
 まるでエリザの周りだけが無重力になったかのように静かにその身は浮かび上がった。海上に出たエリザに大瀑布の飛沫も当りはしない。すべての水がエリザを避けていた。
 「あと、もう少し耐えれば・・・兄さまを」
 宙に浮かぶエリザは荒れた海の中から頭を出した真っ黒な岩礁を思わせる、カイルの怨恨の炎を見て弱々しく呟く。

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