《MUMEI》

「初戦の相手は……フランスだ。」


しょ、初戦から強豪チームと!?


俄然やる気が出てくる。


何処かの知らない国代表チームよりも、
名の知れた強豪チームとの対戦。


どんな試合になるんやろうか?


「なんか、わくわくするっすね!

先輩!」


「………。」


「せ、先輩?」


どうしたんやろう?


心なしか、
先輩の顔が引きつっているような……。


「先輩?

大丈夫っすか?」


「……!?

あ、ああ……大丈夫。」


そう言いつつも、
気丈に振る舞っているとしか思えない。


「せんぱ……。」


「だ、大丈夫だって!

フランスとの対戦に嬉しすぎて声出なかっただけだから。」


倉木先輩は俺の頭を掻き回すと、
逃げるかのようにしてその場を立ち去った。


本当やろうか?


さっきの表情……。


嬉しさで絶句した表情よりもむしろ、
恐怖で怯えたような…そんな表情をしていた。

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