《MUMEI》
・・・・
 策を練ろうといい答えは見つからなかったが、それでも好機は訪れるだろうと待った。
 そう考えるのにも理由はある。それはエリザの行動に引っかかる点が多数あったからだ。どうしてこれをあの妖魔アーヴァンクとの戦闘の際に使わなかったのか、もしあの場面で使っていればアーヴァンクを失うこともなければ、早々にカイルを殺すことができたはずだ。しかしそれを彼女はしなかった。そしてもうひとつはカイルが諭しにかかった際のエリザの言葉だ。『後戻りはできない』、つまり現時点で彼女が窮地に立たされていることを表している。これらからカイルはエリザが苦肉の策としてこの魔法を使ったと踏んだのだ。
 この魔法を使おうとしなかったのは何か大きな理由があったからではないのか。
 カイルはそこまで考えた上で、静かに反撃の機会を待っている。
 そしてその時はもう間近までやってきていた。

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