《MUMEI》
ついていけない
.

なんだか疲れたわたしは顔を両手で包み、はぁぁぁ…と深いため息をつくと、


低い声で、小さく呟いた。





「義仲に、ついて行けないよ…」





わたしの声に、


将門と義仲が振り返る。


わたしはゆっくり両手を顔から離し、

物静かな目つきをした義仲を、見つめる。


「…いきなり『他のヤツと付き合えば?』って言ったり、今みたいに『俺のだ』とか言って、もうワケわかんないよ。こんなんじゃ、ついていきたくても、ついていけない」


わたしの台詞を聞いた千影は、困惑したように、ちょっと…と小声でたしなめた。きっと、勢いでそんなことを言ったのだと思ったのだろう。


けれど、それは、

わたしの胸の中に、ずっと渦巻いていた、不安要素だった。


こんなふうに口に出すつもりはなかったけれど、


もう、あとには引けない………。


ついに本心を口にしたわたしを、義仲は凍り付くほど冷たい目で見つめ返す。


そして、


「…あっそ」


と、素っ気なく呟いたのだった。明らかに怒っている様子だった。


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