《MUMEI》 身内マカは足音高く、とあるビルの廊下を歩いていた。 オフィス事務所に入ると、スーツ姿の社員達がマカを見て、笑顔で頭を下げる。 「あら、お嬢様」 「マカさん、お久し振りです」 「社長なら私室の方で休憩中ですよ」 「すまんな。ちょっと借りるぞ」 奥の社長室をノックも無しに明けて、そしてそのまた奥の扉も開け放つ。 「マサキっ!」 文字通り怒鳴り込むと、中にいた中年の男性が眼を丸くした。 「マカ…。会社に怒鳴り込んでくるとはどうしたんだい? お小遣いが欲しくなった?」 部屋の中心のベッドに寝転び、テレビを見ていたマサキはあくまでも笑顔。 だがマカは殺気立っている。 どかどか中に進み、首を掴んだ。 「言えっ! どこのバカ女に言われて、あんなモノを作らせた?」 「バカ女? モノって何?」 きょとんとしているマサキの首を、力の限り握り締めた。 「あはは、苦しいよマカ。激しい親子愛だね」 「黙れっ! お前と血のつながりがあると思うだけで身の毛がよだつわっ!」 「まあまあ。それよりちゃんと話してみてよ。全然分からないんだから」 ぴたっとマカの動きが止まった。 二人の面影は良く似ていた。 それもそのはず、マカとマサキは実の父と娘。 そして店主はマサキの兄の長男になる。 「…死者をよみがえらせる人形を作らせただろ? 誰に言われてそんなモノを作らせた?」 マカは低い声で、短く問い掛けた。 マサキはしばし「う〜ん…」と唸りながら考え、「ああ」と思い出した。 「例の人形か…」 口の中で呟き、ふと真剣な表情になる。 前へ |次へ |
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