《MUMEI》 「そしてその目的も、だ。何の為に普通の人間に悪影響を及ぼすモノを作らせた?」 マカの心底暗い声に、マサキは苦笑を深くした。 「作らせた人は………キミの母親だよ」 「なっ…!」 マカの顔色が一気に白くなった。 「何っ…バカなことをっ…! そもそもっ、母様はあの部屋から出られないんじゃないのかっ!」 テーブルを叩いて立ち上がったマカは、まだ信じられないと言った顔をしている。 「確かにカノンはあの部屋からは出られない。だから僕が頼んだんだよ」 「っ! ふざけるなっ! 私は一族の次期当主の身なんだぞっ! その地位を捨てさせるつもりかっ!」 「そんなつもりはないよ。現に父…いや、当主には許しを貰っている」 「何を考えているんだ! あのクソジジイっ!」 「まあ…カノンのあの状況を知っているからだろうけど…」 「ああなったのは他でもない。ジジイのせいだろ。生まれたばかりの私を、母から無理やり引き離し、当主の英才教育を受けさせたんだからな」 「うん…。それにマノンのこともあるから」 ぽつりと呟いたマサキの言葉に、マカの体が強張った。 カノンとはマカの実母。 そしてマノンとは―マカの双子の弟だった。 だったという過去系を使うのには理由がある。 すでにこの世にはいないからだ。 マカと共に母の胎内から生まれ出たマノンの体はすでに、冷たくなっていた。 なのに現当主こと、マカの祖父は次期当主の教育の為と言い、カノンの手からマカを取り上げたのだ。 前へ |次へ |
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