《MUMEI》

そのせいでカノンは精神に異常をきたし、おかしくなってしまった。

彼女は今、一族の本家の奥深くに閉じ込められている。

閉じ込められていると言っても、普通の生活を送っているだけだ。

ただ、外の世界には一切関わっていないが。

マカは年に数回しか実母に合っていない。

元より一族の教育係りに育てられていたせいで、両親とも遠縁になってしまっていた。

それに…カノンは会いに行くと、まるでそこにマノンがいるように会話をしてくる。

マカのことは分かっている。

けれどマノンがまるで生きてそこにいるように話をするのだ。

なのでマカは実母を苦手としていた。

マサキとは月に何度か会うか、カノンとは年々減っていた。

そのカノンがマサキに頼んで、あの人形を作らせた。

ならばその最終目的は―。

「…まさか、マノンを生き返らせるつもりか?」

「ご名答」

マサキはあっさりと認めた。

だがマカの表情は複雑に歪んだままだった。

「…それを当主が本当に認めたのか?」

「『出来るなら』、良いってさ」

マサキは深く息を吐いた。

「『出来るなら』って…もう出来ないだろう? この件には私が絡んでしまった」

そう言ってふと気付いた。

店主はきっと、このことを知っていたに違いない。

けれどあえて言わなかったのは、きっとマカを思ってのことだろう。

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