《MUMEI》 「例え実の母親でもな…」 呟いたマカの言葉を、マサキは答えず、思いで受け止めた。 やがて長いトンネルを抜け、森に出た。 そここそが、マカの一族の本家のある場所。 車は森の中心部へ向かう。 本家へ向かって―。 「僕も一緒で良いかな?」 「…私の邪魔をしないと誓えるなら、許可しよう」 マサキは苦笑しながら肩を竦めた。 本家の家を門は、マカが立つと勝手に開いた。 まるでマカを迎え入れるのが当たり前だというように。 そしてどんどん中へ、奥へ進む。 中庭を抜け、本家の住居から少し離れた建物へ。 元は来客を泊める為の離れは、母の住居と化していた。 声もかけずに中に進む。 途中、女中達がマカ達の姿を見て、無言で頭を下げる。 僅かな緊張感がこの離れに満ちている。 そして―マカは気付いていた。 この離れに満ちる、腐臭…いや、死臭に。 「マノン…」 険しい顔で呟き、離れの一番奥の扉の前にたどり着く。 匂いの元はここからだ。 重厚な木の扉は、ある意味、封印だ。 忌まわしいモノを封じる為の。 前へ |次へ |
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