《MUMEI》
未来へと続く絶望の闇
「…結局、私は何も出来なかったな」

例の店で、マカはテーブルに雑誌や新聞を広げながら呟いた。

マカの向かいに座る店主は、困り顔でブレンドティーを淹れた。

「…マカは頑張りましたよ。ちゃんと人形の件を済ませました」

そう言って店主はカップをマカに差し出した。

一口飲んだが、マカの憂い顔は晴れない。

「何を済ませたと言うんだ…」

結局その後、カノンを通じてマサキが人形の製作と配付に関わっていることを、マサキ自身から聞いた。

止めるように言うと、マサキはすぐに止めた。

それでとりあえず、死者がよみがえるというウワサは消えた。

しかし………。

人形を所有していた者が、一気に失踪した。

マカの見ていた雑誌や新聞には、その記事が大きく取り上げられている。

しかし人形の件は、マカの血族が揉み消した。

血族のことは、何が何でも秘密にしなければならない。

その為ならば、手段は問わない。
 
…マカ自身も、手段を持っている。

気を操る力を持つゆえに、相手の気をも操れる。

その力で肉体の能力を高めたり、相手の記憶もある程度ならば変えられる。

実際、親友だと言っていたミナにも使ったことがあった。

それまでの自分を消すのは、ある意味自殺行為に等しかった。

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