《MUMEI》 マカは失踪者達がすでにこの世にいないことを知っていた。 あの光に溶けたのは人形と、人形の契約者達だということを、分かったのだ。 契約者達は最愛の者と一緒に、マノンの肉体の一部にさせられた。 恐らく解放は、マノン死のみ―。 だからこそ、負けられない。 「今度は負けない。必ず、私が勝つ」 眼が赤く染まったマカを見て、店主は深くため息をついた。 「こんな事態になるなら…」 「関わらなければ良かった、などとは思うなよ? 結局、こういう運命だったんだからな」 「運命…ですか。もっとロマンのある言葉だと思っていたんですけどね」 苦笑する店主を見て、マカは呆れた顔をした。 「ウチの血縁者ならば、運命は諦める言葉だと思え」 「そうですね」 「さて、そろそろミナとの待ち合わせの時間だ」 店の壁にかけてある時計を見て、マカはブレンドティーを飲み干し、立ち上がった。 「相変わらず仲がよろしいことで。今度ここに連れて来てくださいよ」 「緊急避難場所としてなら来てやる」 「おやおや」 肩を竦める店主を店に残し、マカは出て行った。 細い路地を抜け、街に出る。 前へ |次へ |
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