《MUMEI》

大会前日。


この日は試合前日ということもあって、
比較的練習は早く切り上げることが出来た。


俺と倉木先輩は軽くパス練習をした後に、
木陰に入り休憩をとることにした。


「なあ、賢史。」


「なんすか?」


「明日…絶対勝とうな。」


「今更何いってんすか!

当たり前じゃないっすか!」


いきなり何言い出すんやろう?


そう言って先輩の方を見ると、
思わず目を見開いてしまった。


先輩の目は笑っていなかった。


口もキツく閉じ、
真剣そのものだった。


「先輩?」


「ん?」


「その……先輩の言っているのは、
優勝するって意味っすか?

それとも、初戦のフランスとの試合に勝つって言う意味っすか?」


「え……?」


先輩の目が泳いだ。


それで俺は何かあるんだと睨んだんだ。


「何があるか知らんけど、
もし試合に個人的な感情が入っているんなら……。

この間の、俺のような結果になりますよ。」

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