《MUMEI》
戦慄の事情聴取
.

ぼんやりしながら椅子に座っていると、クラスメイトに呼ばれた。


「川崎先生が呼んでるよ」


わたしが顔をあげ、教室のドアの方を見ると、

いつもの黒いセルフレームの眼鏡をかけ、そしてなぜか、左頬に大きな絆創膏を張った川崎先生が、ニコニコしながら立っていた。



…………怖ッ!!



彼の笑顔に空恐ろしいものを感じながらも、わたしは自分の席を離れ、彼のもとに歩み寄った。


「…その絆創膏、どうしたんですか?」


まず、一番気になったことを、怖々尋ねると、川崎先生は笑顔を崩さず、ここじゃゆっくり話せないから、と、わたしを促し、歩き出した。



…………絶対、怒られるッ!!



わたしは青ざめながら、彼のあとをノロノロ追いかけた。





******





ひとけのない、特別教室棟。

そこの美術室の中で、

わたしと川崎先生は、向かい合っていた。


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