《MUMEI》
お嬢様ってのは…
梨央は、文句を言いながらも、悠一が来てくれて、やっと素の自分に戻れる時間がきたことを実感していた。






「なぁ!」

「ん?何?」

「お嬢様ってさ、どんなかんじ
 なんだ?」

「はぁ?」





また唐突な質問だ。
さっきの話の流れから、どうしたら今の質問が出てくるんだ?





「なんかさ、今までお嬢様とか
 見たことなかったし、イメー
 ジとは違うからさ」

「あぁ、そういうことか。お嬢
 様ねぇ…。…最悪だよ」

「え?」

「だから、最悪なんだってば」





悠一は、予想外の応えに驚きを隠せなかった。






「…何で?」

「悠一の想像するお嬢様っての
 は、何でも使用人とかにやっ
 てもらえて、欲しい物も全部
 揃ってて、なに不自由なく幸
 せな一生を送れるってかんじ
 じゃない?」

「まぁ、そうだけど…」

「だったら、それは違う。少な
 くとも僕はね。確かに、裕福
 な生活ではあるよ。でも、一
 番最後の"幸せな一生を送れ
 る"っていうのが違う」

「幸せじゃないのか?」

「悠一は、友達が一人もできな
 くて、自由に外出もできなく
 て、部屋に閉じ込められるだ
 けの生活が幸せだって言える
 か?」

「………」






悠一は、梨央の問い掛けに、すぐに言葉を発することができなかった。

友達と遊んだり、話したりすることもなく、孤独な生活を送るだけ。それは、自分が体験したことのないものだ。

けれど、想像ならできる。

確かにそれって……

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