《MUMEI》 夜・バイト先にて友人達とファミレス、カラオケ、ショッピングのハシゴをした後、わたしは家に帰らず、そのままバイト先に向かった。 終電近くの時刻。 すでに辺りは真っ暗で、霧が濃くなっていた。 今日は満月だというのに、朧月夜だ。 「まあキライじゃないけどね。キレイだし」 肩を鳴らし、駅から少し離れた地下鉄に降りる。 改札を通る前に、駅員室の扉をノックした。 「おお、ルカちゃん。いらっしゃい。今晩もよろしくね」 中から人の良さそうな中年男性が顔を出す。ここの駅員だ。 「はい、よろしくです。何か注意、ありますか?」 中に入ると、もう一人の駅員の人が頭を下げてきた。この人は新人だ。 「そうだねぇ…。相変わらず『迷い人』が多いぐらいだね。でも私達ではどちらなのか、見分けが付かないからねぇ」 説明を受けているうちに、若い駅員がお茶を淹れてくれた。 「どうも」 お茶を一口飲み、中年の駅員を見た。 「対処は?」 「とりあえず、いつもの通りだよ。あとはルカちゃんに任せるよ」 困った様子の駅員2人に、私は苦笑した。 「はい、それがわたしの仕事ですから。それよりも帰り道にはくれぐれも気を付けてください。表の世の犯罪者には、わたし達の力は行使できませんから」 「分かっているよ。ルカちゃんの親族の人が、送迎してくれるから大丈夫」 前へ |次へ |
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