《MUMEI》 「マカ…。わたしより年下なのに、この仕事を?」 思わず顔をしかめる。 まあ年下の従妹である彼女の方が『強い』ので、仕事上の心配は少ないと思うけど…やっぱり危険だ。 「まあ当主のお考えでね。将来当主になる為には必要だろうって」 ラゴウが苦笑しながら言った。 「ったく…。マカも気の毒というか何というか…。生まれてすぐ、次期当主に名指しされちゃ逃げ場無いわね」 「そうだね。当主にしては早計だと俺も思うが…何分、俺達一族は当主の命令には逆らえんからな」 おじが肩を竦めて言うと、他の男性二人も同じくため息をついた。 「確かにマカはオレ等よりも『強い』からな。そこに目を付けられたんだろうけど」 「シヅキ、そういう問題じゃないでしょ? ならもうちょっと大事にしてあげれば良いのに…。馬車馬のごとく、こき使われてるんだから」 「まあなぁ…。でもアレ、半分はマカの性分だろ? 例のケータイだって、マカの方から首突っ込んだんだって?」 「アレはっ! …マカの親友が引っ掛かっちゃったから…」 「損な性分って言うか、苦労性と言うか…」 その頃のマカ―。 「はっくしょんっ! ひっくしょんっ!」 「やだ、マカ。カゼぇ?」 合宿場の部屋で、ミナと勉強をしていたマカはティッシュで鼻をかんだ。 「…いや、誰か悪いウワサをしてやがる」 胡乱な目付きで、マカは空を睨んだ。 「まあまあ。マカちゃんのことはともかく、ルカちゃん。そろそろ頼むよ」 「あっ、はーい。じゃあちょっと着替えてきます」 そう言ってわたしは奥の部屋へ行った。 前へ |次へ |
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