《MUMEI》 夜・バイト開始わたしは仕事着に着替え、部屋に戻った。 この駅は独特な制服だ。黒づくめと言っても過言じゃない。 わたしの仕事着は女性用というだけで、男性用とあまりデザインは変わらない。 「それじゃ、今晩も行ってきます!」 「ああ、頑張ってな」 「ケガなどしないようにね」 「まっ、ほどほどにな」 三人を駅員室に残し、わたしは一人、ホームに行った。 わたしの『バイト』を開始する為に。 制服は独特のデザインのスーツみたいなもの。 この地下鉄は少し寒いので、生地は厚く出来ている。 わたしは帽子を被り直し、地下鉄の中を歩き出した。 電車を動かすのは、彼等の役目。 地下鉄の運営をするのも、彼等の役目。 わたしの役目とは、『案内』だ。 この地下鉄には、乗れる資格のあるモノと、乗ってはいけないモノが集まる。 最近、霧が濃くなっているせいで、『迷子』が多い。 行き先が分からなくなる迷子じゃない。 この地下鉄の意味が分からず、迷っているモノを『迷子』と言う。 つまり、乗る資格のないモノのことを、『迷子』と言うのだ。 前へ |次へ |
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