《MUMEI》
バッグの中
 ザザーとバッグを傾けて中身をばらまく。
その中から同じアルファベットの物を選び出していく。
「……で、何これ?」
並べられた黒い物体を前に、ユキナは言った。
「……武器だろ?」
「どんな?」
「さあ」
ユウゴは首を傾げながら、今度は番号順に並び替える。

やはり、わからない。

どこをどうやったら、武器としての形になるのか。
 試しに、一番の部品に二番の部品をはめてみようと試みるが、うまくはまらない。
三番、四番と手に取ってみるのだが、やはりどれもうまくはまらない。

「……あー、ダメだ。すげえ、イラつく」
手に持った部品を放り投げながら、ユウゴは言った。
「やっぱ、知識がないと無理だって」
「なんか、使えるもんがあるかと思ったんだけどな」
 無念そうに、ユウゴはバッグを逆さに振った。
すると、残っていた部品に混じってチャリンと小さな鍵が落ちてきた。
拾い上げてみると、どこかのコインロッカーの物のようだ。

「どこの鍵?」
ユキナがプレートを覗き込んだ。
「……駅」
ユウゴが答えると、ユキナはおもしろいほどはっきりと顔を引き攣らせた。
「え、駅って、まさか」
「いや、あそこのじゃない。これは……地下鉄のだな」
駅名を確認しながら、ユウゴは言う。
「あ、そうなんだ。よかった」
「でも場所が地下だけに、危険は倍増だよな」
「……わたし、行かない」
昨日の出来事を思い出したのか、青い顔をして首を振った。
「まあ、別にいいけど。じゃ、別行動ってことで」
「えー」
明らかに不満顔のユキナに、ユウゴはため息をついた。

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