《MUMEI》
気づいた気持ち
.

音楽に興味のないわたしは、手持ち無沙汰で、傍にあった試聴用マシンをいじっていた。

ヘッドフォンをつけ、再生ボタンを押すと、今流行りの曲が、大音量で鳴りはじめたので、ビックリしてヘッドフォンを外す。

それからため息をはき、ヘッドフォンをもとに戻すと、将門の様子をチラリと伺った。

彼は相変わらず曲選びに夢中になっていて、わたしがヒマを持て余していることに気づく様子もなかった。



…………もし、



今、一緒にいるのが義仲だったら、わたしのリアクションを見逃さず、散々バカにして笑ったあと、ムカつくくらいつっこんできただろうに。



将門から視線をそらし、ふと、周りを見回してみる。

店内には、わたしと同じくらいの歳のカップルが、仲睦まじくCDを選んでいた。
時折見せる、彼らの笑顔は、とても楽しそうに見えた。



…………『普通』のこと。



わたしくらいのカップルは、みんな学校帰りに、ああやって仲良く買い物をして、楽しい時間を過ごすのだ。


義仲みたいに、


オカマが経営するスナックに連れて行ったり、

頭の弱そうなアゲ嬢たちと、バカ話することもない。



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