《MUMEI》

.

…………でも、


わたしは、

そんな義仲と過ごした時間を、実は、楽しんでいたのかもしれない。


でなければ、今、こうやって退屈しているはずがないもの−−−。



「将門くん」



わたしは、凛とした声で彼を呼んだ。

将門は顔をあげ、なに?と、ほほ笑みを浮かべて首を傾げる。

わたしはまっすぐ彼を見据えて、言った。


「ごめん、わたし、もう帰るね」


そう言い残すと、わたしは颯爽とCDショップの出入口へと向かった。

その途中、将門が慌てて呼び止める声が聞こえたけれど、わたしは振り返ることも立ち止まることもせず、ただまえを見て、お店から出た。





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