《MUMEI》
浪漫
優里は真顔で冬広を見つめた。
「あたしをどうする気?」
Sが燃えるセリフだ。
「優里。優しく意地悪されたいから無防備になったんだろ?」
優里は身じろぎした。
「違うよ。自分が無理やり縛ったくせに」
「本当に嫌だったら抵抗したはずだ」
「わかったわよ」優里は笑顔で口を尖らせた。「ただし、降参したらやめてね」
「甘いよ」冬広は軽く胸やおなかを触る。
「ん…」
この触れるか触れないかのソフトタッチがたまらない。
円を描きながら容赦なく敏感なところを攻めてくれる。
優里は目を閉じて甘い吐息をもらしながら、体をしきりに動かした。
嫌いな男に攻められて感じてしまうのは屈辱だが、好きな人に意地悪されるのは快感だ。
「優里。女の子が今まで一度も攻められたことがないツボを攻められたら、終わっちゃうって知ってた?」
「そんな脅しは、あたしには通用しないよ」
「じゃあ攻めていい?」
「さっきは冬広さんの卑怯な不意打ちに不覚を取っちゃったけど、今度はそうは行かないよ」
浪漫だ。夢のようだ。冬広は最高に興奮していた。
「優里。意地悪されたくて、わざと挑発してんのか?」
優里は目を閉じたまま笑顔で答えた。
「違うわよ。舐めないで。あたしの理性を飛ばせるものなら飛ばしてみなさい」
「じゃあ、飛ばしたら何でも言うこと聞く?」
「いいわよ」
胸とおなかを触られているだけで性感が高まっているくせに、優里はさらに挑発した。
「あたしを虜にしたらねえ、抱いてもいいよ」
「ハハハ」冬広は思わず笑った。「体を賭けるとは。じゃあ、無謀な賭けをしたことを後悔させてあげる」
「できるものならやってみなさい」
冬広は優里の秘部を手で押さえた。彼女は緊張する。唇を結び、無理にすました顔で攻撃を待った。
冬広は禁断のGスポットを探す。
「ん…」
腰を浮かす優里。首をゆっくり左右に振り、両脚に力を入れた。
(え? 何これ…)
最大の弱点を探り当てた冬広は、お望み通り意地悪した。
「あっ、ちょっと待って」
優里は慌てた。
「待ってください冬広さん」
優里は腰をくねらせて冬広の手指から逃れようとするが、無抵抗の身では、どうにもならない。
「やははは、嘘でしょ、やめて、やめて」
力が入らない。笑顔の優里は、泣き顔に変わった。
「わかったから、わかったから、やめて、降参、降参…」
ちょっと気持ち良過ぎる。
「冬広さん、やめて、お願いだから」
呼吸が乱れる優里に、冬広は言葉でも攻める。
「気持ちいい?」
「やめてお願い」
「気持ちいいかって聞いてんだよ?」
「気持ちいい、気持ちいい」
「じゃあ、このまま1時間いじめてあげる」
「そんなことしちゃダメ!」
「天国と地獄を味わいな」
「嘘でしょ?」
冬広は合わせ技で優里を困らせる。
「あああん、待って、待って…」
まさか本当に1時間も意地悪する気か。そんなことされたら失神してしまう。
優里は本気で焦った。
「はう、はあん、ヤバいやめて、あん…冬広さん一旦待って、ホントにヤバいから」
「ダメ。あんな大口叩いたんだから容赦しないよ」
「違うの、あの大口は違うの、あん」
完全に急所に入ってしまった。優里は腰を浮かしてのけ反った。
「ダメ、どうにかなっちゃう!」
「愛しの優里をどうにかできるなら、2時間でも3時間でも意地悪しちゃうよ」
「何が愛しよ、愛を感じない…あん!」
「優里。虜にすると言ったろ?」
「虜になってる、もうなってるからあ!」
「ホントか?」
「ホントホント」
「許してほしい?」
「許してください」
かわいい。たまらない。冬広はもっと困らせてあげたかったが、許してあげた。
「はあ、はあ、はあ…」
冬広が手足をほどくと、優里は抱きついた。
「あたしなんか虜にしてどうすんの!」
冬広は愛しの女神を強く抱きしめた。
「優里」
「ん…」

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