《MUMEI》

七生と二郎が畏まって俺達を呼んだ時、大学卒業後も二人で暮らすという話から始まった。
俺は鈍くて、今までの延長だとばかり思っていたが、流石母親、薄々だが感づいていたらしい。


「そりゃあ、成人男子が大学卒業してから浮いた話の一つも出なかったら考えるでしょう。それに恋多き七生君がぱったり誰とも付き合わなくなったのよ?」

なんて説得力だろう。


「父さん、母さん、黙っていてごめん。でも、俺達ずっと助け合って真剣に付き合ってきたんだ。」

あんなに小さかった二郎は俺を真っ直ぐ見つめられるくらいに成長していた。


「二郎をくださいとは言いません。
俺達は互いに相談して一緒に考えて笑って泣いて、いつもこの関係が崩れないように大事にしてきました。ただ、それだけはわかってて欲しかった。」

半信半疑だったが七生の瞳の強さで彼が本気だと理解した。


「いつから……付き合ってたんだ?」

当たり前のような台詞だ。


「高校のとき、二年かな。」

じゃあ、かれこれ6年近く付き合ってたのか。


「どうして、今言ったの?二郎も就職決まってないじゃない。」

母さんの方が冷静だ。


「俺も教師だし。二郎も働くには条件なんて選んでいられない、でも、離れてても居たいって二人で決めたことを教えたかった。」

七生、大人になったな。
すぐ怒る泣く喚くが当たり前だと思っていた。


「俺も七生も話し合って考えたんだ、今さら別れる気はないよ。縁を切られても仕方ないと思ってる。」


「二郎は縁を切りたいのか?」


「そんなこと無い、でも俺は誇れるような息子じゃないから……」

二郎、そんなに罪悪感を抱いてたのか。


「二郎が悪いなんてこれっぽっちも無いだろ!堂々としていいんだ、俺達はどう言われようとありのまま生きてきた。今日はそれが更に素直になっただけだ。
それに、二郎はいつだって素晴らしい!」

七生、力が入ってついに褒め称え始めた。


「噛み付かないで……、」

七生の襟を掴んで手綱のようにしている二郎だったが僅かに表情の違いを汲み取ってしまった。
いつものとは違う。
あえて、視線を外し頬が赤らんで、はにかんでしまうそれだ。

見てるこっちが恥ずかしくなった。

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