《MUMEI》

―――… カツ・コツ・カツ・コツ …



ヒールの靴音は、六本木ヒルズのミュージアムコーンの前を通り過ぎる…。



バタ子はニタニタと笑みをうかべながら、森タワー前の坂道を下っていった。



(多少予定は狂ったけど、まあ結果オーライだったわね…。


嗚呼それにしても、なんていい気分なんでしょう…


今夜は祝杯をあげなきゃ…(笑)


…20年越しの恨みを晴らした祝杯をね…。)



すれ違う人々は皆、不気味な笑みを湛える熟女に驚き、バタ子を避けるように道を開ける。



バタ子は勝ち誇ったように、そこを突き進むだけだった――…。

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