《MUMEI》

シャブ中らしき真っ赤に目を腫らした外国人が、娼婦のように毒々しいバタ子の装いを眼で追ってみるが――…



すぐに帽子の下から覗く、トウの経った熟女顔に気付くと、あからさまに嫌な顔をして路上に唾を吐き捨てていた。




―――… カツ・コツ・カツ・コツ …



そんな毛唐の無礼な振る舞いを気にもとめず、バタ子は六本木通りを我が物顔でかっ歩してゆく…。



そして日比谷線の駅に向かおうと、横断歩道を渡ったとき――…



バタ子「あ………そうだゎ…。」



バタ子は一瞬、なにか些細なことでも思い出したように空を見上げた。

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