《MUMEI》

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呆然と、その名を口にしたわたしに、ルカさんは、ゆったりとほほ笑む。


「璃子ちゃんでしょう?お久しぶりね」


元気だった?と尋ねるハスキーボイスに、思わずうっとりしてしまう。

わたしが、名前覚えててくれたんですね、と呟くと、ルカさんは、もちろん!と笑い、自分のこめかみを、細い指でさす。


「ひとの顔と名前をすぐにインプット出来るの。一種の職業病かもね。」



…………なるほど。


ルカさんはナンバーワンホステスだ。
きっと、多くの客のことを心得ているのだろう。


ルカさんはこめかみから指を離すと、でも、とやんわり言った。


「璃子ちゃんは特別。あなたみたいなキレイな子は、忘れたくても忘れられないわよ」


と、サラリとお世辞を述べる。



…………さすが、ナンバーワン。

そのテで一体、何人の男たちをトリコにさせてきたのか。



ちょっと、空恐ろしい気持ちになった。


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