《MUMEI》

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ルカさんは、目尻ににじんだ涙を指先で軽く拭うと、あのね…、と話し始めた。


「義仲くんは、キャバクラの常連なんかじゃないから、絶対」


当然のように断言する彼女に、わたしはムッとしながら、どうして?と尋ねた。


「わたしの目の前で、仲良さそ〜に、『久しぶり』だの、『寂しかった』だの話してましたよ」


わたしの剣幕を見て、ルカさんはまた笑った。ひとしきり笑い、それから答える。


「義仲くんがアゲ嬢ちゃんたちと知り合いなのは事実だけど、璃子ちゃんが心配するような関係じゃないわ」


「どうして言い切れるんですか?」


「彼女たちは、義仲くんを『お客様』だなんて思っていないもの」


「意味がわかりません」


要領を得ない会話にムクれると、ルカさんは自分の髪の毛を撫でながら、妖艶にほほ笑んで、

さっぱりとした抑揚で答えた。



「彼が『元締め』のご子息サマだから、よ」



………。

……………。

……………………は?



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