《MUMEI》

「だっだったらさ!」

いきなり可愛い顔をずいっと近付けて来た。

…ホントに可愛いなぁ。

「そっそろそろキ…ス、した方が、良いかなって…」

ああ、キスがしたいんだ。

まあ中学生の男の子だし、そういう時期もあるよね。

「そうね。付き合って半年になるし、そろそろ良いんじゃないかな?」

「えっ? ホントに?」

心底ビックリされると、わたしの方がビックリ…。

「うん。良い時期なんじゃないかな?」

「…何か随分アッサリしてるな。もしかしてもう…」

「ないわよ。今日がはじめて」

………本命の人とは、ね。


「だっだったら…!」

「あのね、あせる気持ちも分からなくもないけど、場所変えましょ?」

ちなみに今、わたし達は休日の公園にいた。

大きな広い公園には、昼下がりのせいか人がかなりいる。

ベンチに座って話しているけれど、誰の耳に入っているか分からないし、そもそも見られたくはない。

「あっ、そっか」

わたしは周囲を見回した。

ちょっと離れた所に木が植えられている場所がある。

あそこなら良い影になるだろう。

「こっち行きましょう」

わたしは彼の手をとって、そこへ向かった。

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