《MUMEI》

そして人気のない所で、わたし達は向かい合った。

「ここならヘーキね」

「あっああ…」

でも彼は緊張しているのか、動かない。

木陰の中でも分かるほど真っ赤な顔をしている。

もう…本当に可愛い。

街で見かけた時から、わたしは彼に夢中。

だからわたしの方から、彼にキスをした。

「っ!」

あたたかく、甘い唇。

ちょっと触れただけで、すぐに離れた。

「えへへ…」

自分の顔が熱くなっていく。

そしてニヤけてしまう。

「〜〜〜!」

「今度はキミからしてね」

そう言って彼の体を抱き締め、再びキスをする。

今度は触れるだけの長いキス。

彼も恐る恐る震えながら抱き締め返してくれる。

わたしはふと目を開け、彼の顔を見た。

わたしは彼の全てが可愛いと思えてしまう。

きっと言ったら怒るから言わないけれど、いつでも思っている。

そしてわたしも言わないだろう。

だって年上だから。

彼に大好きなことは伝えて、夢中なことは隠しておこう。

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