《MUMEI》
祭の跡
「……峯君が死んだ。」

先生は襖から廊下へと長い腕を投げ出した。

「精気でも吸い取った、髪でも梳くように、其れとも唇から……」

綺麗な先生の指が僕の首筋で遊ぶ。




「峯さんは、奥様の家業を継ぐそうですね。」

峯さんは編集の仕事は辞めて今の社長に全て権利を譲るそうだ。


「あんな峯君は初めて見たよ、憑き物でも落ちたみたいな……ふむ、そうか。君が食べたのか。」

先生の言葉は的確だ。


「先生は何を食べますか、今日は御饅頭を戴いたのですよ。先生の好きな粒あんです。」

御饅頭には決まって、お茶は玉露にする。
先生も甘味を口にすれば素晴らしい名作を生み出してくださるだろう。

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