《MUMEI》

先輩は溜め息を一つついた。


「分かってるよ。」


「なら……。」


「フランスのチームにな。」


先輩は俺の言うことを無理矢理遮った。


「明日のフランスのチームの中に、
アイツらがいるんだ。」


「アイツら?

誰なんすか、そいつ?」


「…日本で同じチームの奴等。」


「つまり、先輩が本当は留学するはずだったフランスで、
偶然勝ち上がった奴等ってことっすか?」


「そうなるね。

ただ、偶然なんかじゃない。

実力も相当だ。」


「え?

じゃあ別に仲間と一緒にフランスで練習しても良かったんじゃ?」


てっきり仲間が相手にもならない実力だったから、
わざとブラジルに来て個別に練習に来たのだと思ってた。


「……仲間…ね。」


「え?」


風が一吹きでもすればかき消されてしまうのでは無いかと思うほど、
先輩は小さく呟いた。


“……仲間…ね。”


そう呟いた先輩の横顔は、
とても悲しそうだった。

なんでこんな顔するんだ?


俺は不思議で堪らなかった。

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