《MUMEI》
犯人 -ハンニン-
携帯を操作する手が止まった。

その画面に映る字を見て、俺は何を思ったか、笑い出した。

本当は泣かなきゃいけない。

誰よりも泣かなきゃいけない。

のにー…、

俺の口から溢れるのは乾いた笑い。

涙も声も出てこない。

クククッ、と一通り笑って溜め息を吐く。

「お前、趣味悪い…。」

突然真上から、とても低く、落ちついた声が降って来た。

「お前、狂ってるな…。」

俺は声のする方を振り向く事もせず、じっと携帯の画面を見つめた。

そこには(5年前の解体殺人事件、犯人捕まる!取り残された子は何処へ…)と書いてある。

「これ、俺の親の事なんだ。」

俺が答えた事に驚いたのか、相手が戸惑うのが分かった。
が、すぐに質問が返ってきた。

「どっちだ…?。」

どっち、とは殺した方か殺された方かという意味だろう。

酷な質問だな。

「殺された方。」

相手が動揺すればいいと思って、平然と言ってやった。

しかし相手が動揺する気配もなく、

「そうか…。」

などと答えられた。

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