《MUMEI》

男はさらに続けて言った。

「何故、笑っていた…?」

俺は嘲笑って言ってやった。

「この犯人、俺の幼なじみだったんだ。」

薄い笑いを浮かべてその男を見る。

「滑稽だろ?ずっと、横で俺は犯人と話して、遊んで、笑ってたんだぜ?」

俺はそこで我に返った。

知らない男相手に何を言っているのか。

しかし、男はそんな事も気にせず話しかけてきた。

「仲良かったのか…?」

相変わらず口数が少なく、主語が無い会話だというのに、俺はこいつのききたい事が良く分かってしまう。

「あぁ、仲はすごく良かったよ。表面上だけだったけど。」

半ばヤケクソに言うと、その男は俺を見据えて言った。

「悲しいか…?」

「悲しい…か。そうだな…。もう、裏切りには慣れたかな。」

「違うと思うぞ…。まだ、頭がついて行かないだけだ…。」

初対面の相手にここまで言われるなんて、俺はどんなに惨めなんだろう。

相手の言葉に答える事なく黙っていると、グシャグシャと頭を撫でられた。

「何すんだ。」

「森川 勝巳だ。」

頭に手を乗せられたまま低い声で言われて、驚いた。

「え…。」

「俺の名前だ…。」

お、お前の名前なんぞきいてねぇよ…。

「お前は…?」

俺の名前なんて知ってどうするんだ…。

そうは思ったが、別に言った所で困りはしないと思い直した。

「矢黒 海理。」

「そうか…。」

そっそれだけ?

何て無口な奴なんだ。

「海理。」

いきなり呼び捨てにしてきた事に驚き、顔を上げる。

そこには、もの凄い男前な男が立っていた。

肩幅が広く、ガッシリとした体系。

色黒で、5cmくらぃの黒髪。

切れ目に通った鼻。薄い唇。

まさにイケメン。男の中の漢だ。

色が白く、目が大きくて、体系が華奢な俺にとって、憧れるべき存在だ。

きっと、男らしいだの力ッコイイだの言われているに違いない。

可愛いだの綺麗だの言われる俺には羨ましいかぎりだ。

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