《MUMEI》
狂った人間
「あの男も実験体の一人だったんだけど、どうも失敗作でさ。」

「一人って‥他にも居るの…?」

「ん〜、てか居たって言った方が正しいね。皆拒絶反応酷くってさ、死んじゃった。ハハッ、皆弱いよね〜。」


狂ってる…


そんな事を平気で口にしている修二が怖かった。

「でもさ、そのリョウ君だけは順応したんだよ。そんな貴重な人材を易々他人の手に渡す訳にはいかない。そこで!あの失敗作を囮に使ったのさ。」

「失敗作…」


まるで人を人として見ていない言い方…


「マリファナ吸わせてさ、一種の催眠術てやつ?“お前は拳銃自殺する”ってずっと聞かせてたらあいつ…マジ死んじゃったもんなぁ!笑えるよなぁ〜!」


全然笑えない…


「でも喋りすぎなんだよ。…ったく、危うく俺が…まぁそれはいい。とにかく、悪魔がお前と接触してたとはな、ラッキーだったよ。ありがと、加奈子。」


修二は飛び切りの笑顔で加奈子に礼を言う。
それこそ、心の底から言うように。

しかし、そんなものは加奈子にとってただの不快感でしかなかった。

こんな狂った人間が自分の愛した男だったかと思うと、吐き気がした。

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