《MUMEI》
入寮式中7
一応、軽く会釈しながら、一番端にいた神澤の前を通り過ぎようとした


「…だめ」

「は?」


俺にしか聞こえない小声で神澤は呟き


俺の手首を掴んだ


途端に、静かだった会場がざわめく


<おい神澤、どういうつもりだ>


会長の低い声がマイクを通して会場に響き渡る


「…」


神澤は、無言でマイクを要求した


<お前、…喋るのか?>


目を見開く会長に、神澤は大きく頷いた


会長はそのままマイクを神澤に


渡すわけはなく、わざわざ神澤から一番遠い場所にいる成瀬先輩をパシリに使った


<はい、神澤君>


マイクを切らずに慌てて来たから、慌てた成瀬先輩の声はバッチリ会場に響いた


<高橋は、俺の補佐だから>


「「はぁ!?」」


<会長には鳳凰寺と相楽が

副には双子が

会計には榊原がいる

俺にはいない

だから>


言いたい事を言い切った神澤は、マイクを成瀬先輩に返した


理屈はわかったけどさ


明らかに、周り騒然としてるんだけど


入寮式、ちゃんと終わるのか?


<ええと、高橋君、せっかくだから何か一言>


え、そこで俺にふる!?

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