《MUMEI》 宵の手ケータイの表示を見ると、夜の6時50分。 門の前で、ミナは深く息を吐いた。 あの後、マカは必要以上に気を使ってくれて、家まで送ってくれた。 いつもならマカ特製の問題集を出してきて、明日までの宿題にするのに、今日はいいからと言われた。 マカの優しさが嬉しい反面、黙っていることへの罪悪感で胸が痛い。 「…今夜で終わらせないと」 今夜の肝試しを終えれば、きっと二人の気も済む。 きっと受験ムードに耐え切れず、言い出したことだろう。 でももし、続くようであるようなら…。 マカと一緒にいられないようにされるのであれば…。 「あれぇ、ミナ。早いのね」 「コンバンワ」 アキとユマがやってきた。 二人の後ろには、大人しそうな少女がいる。 同じ制服を着ているので、同じ学校であることは分かるが、あまり見たことのある顔じゃない。 「そのコは?」 「ああ、隣のクラスのコ。フーカ」 「こっこんばんわ」 メガネをかけ、長い髪を三つ編みにしているフーカはオドオドしながら頭を下げてきた。 明らかに、自らの意思で来たコではない。 「アキ、ユマ。無理やり連れて来たでしょ?」 「違うよ。ちゃんと誘って連れて来たんだよ」 「そうだよぉ。人聞きの悪いこと、言わないで」 前へ |次へ |
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