《MUMEI》 ユマはアキの言葉を返すだけだが、それがミナには気に入らない。 アキの腰巾着とも、影ともウワサされるユマは、元よりフーカのように大人しい少女だった。 しかしアキのような強きものに憧れ、こっちの道に進んでしまった。 「…そう。で、中に入るのね」 いい加減、会話をすることもイヤになり、話を進めることにした。 「そっ、こんくらい、乗り越えられるでしょ?」 そう言ってアキは、ひょいひょいっと門を乗り越えた。 …この身軽さは、マカに匹敵しそうだ。 ため息をつき、同じようにミナは門を乗り越えた。 「っと…。さすがに二人はムリでしょう?」 ミナはユマとフーカを指さした。 二人とも、あまり運動神経は良いように見えない。 「そうね。じゃ、鍵開けるから」 アキは門の鍵を開け、二人を招き入れた。 そして校庭の隅にあるプレハブ小屋に行く。 ここは元は外の体育で使う物が置かれていた。 だが近年、校舎の近くに新しいプレハブ小屋ができ、そちらに物も移動した。 今では何も無い。 「ここで何するってーの?」 「だからぁ、肝試し的なこと?」 アキはクスクス笑いながら、引き戸に手をかけた。 それはあっさりと開いた。 「…何でカギかけてないの?」 「元からよ。それにもうすぐ壊す予定だから、カギかける必要も無いでしょ?」 前へ |次へ |
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