《MUMEI》 もう一本の手ミナは軽く息が上がっていた。 息苦しさを感じているのだ。 やり始めて何分経っただろうか。 壁伝いとはいえ、同じ所をグルグル回っているせいで頭が変になりそうだった。 しかも異変に気付いてしまった。 順番から行けば、アキはユマにタッチする。 そしてユマはフーカに。 フーカはミナに。 そしてミナはアキにと、順番は回っていく。 本当ならば、ミナは二つの角を曲がらなければならない。 しかし…いつの間にか、一つの角しか曲がらなくなっていた。 それは目の前に何かあるから。 それに触れると、自分の番が終わるからだ。 そして順序は巡り、再び自分の番になる。 この異変に自分以外の者が気付くとなれば、それはアキだ。 ミナがタッチしたモノは、アキにタッチしに行くからだ。 しかしアキもミナも声を上げない。 同じ所を回っているせいか、疲れがきていて、気のせいだと思っているからかもしれない。 やがて、アラームが響いた。 それはちょうど、ミナが目の前のモノに触れようとした時だった。 「おっし! 終わりね! みんな、入り口に集まって!」 アキの高い声で、現実に戻った気がした。 前へ |次へ |
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