《MUMEI》
咆哮
「またか。最近、多いな」

うんざりした口調でレッカが言った。

「学校がサボれるから、嬉しいんでしょ?」

冷ややかな視線を送る凜を、レッカは舌打ちしながら見返した。

「知ってるだろ?そんなことで喜んでいられる状況じゃない」

「……早く行った方がいいんじゃない?」

「わかってるよ!」

もう一度舌打ちをして、レッカは走り去った。
その後を、テラがかわいらしくトタトタとついて行った。

ただでさえ状況がわかっていない羽田は、さらにわけがわからない。

「あの、津山さん?」

レッカが走り去った方を無表情に見つめる凜に、羽田は遠慮がちに声をかけた。
しかし、彼女はピクリとも反応しない。

再び、咆哮が響いた。

「津山さん!」

もう一度声をかけると、凜は羽田の肩に乗せていた手をバッとどけた。

「え?」

「説明してほしいんだけど」

「すみません。また、今度」

そう言うと凜は、早足で去って行った。

もう咆哮は聞こえない。

代わりに授業終了のチャイムが鳴り響いていた。

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