《MUMEI》

と言うか、今まで誰にも言われたことなかった。

「俺はずっと思ってたけどな。伏し目がちの時とか、考えている口元に手をやる仕種とか。すっごい色気感じてた」

今まであんまりしゃべったことがなかったが…人の性格って見た目じゃないと思った。

軽い会話が得意なハズの彼から飛び出る言葉は、ありえないぐらいセクハラだ。

「あっそう」

彼にどう思われようと、私にはどうでも良いことだ。

そう思い、ストローに口を付けようとした時。

ぐいっとアゴを捕まれ、そのまま―。

「…んっ?!」

―唇が重なった。

唇はすぐに離れたが、頭の中が真っ白になった。

「…言ったろ? 色気を感じるって」

「だからって…なんでキス?」

「欲情したから」

「………」

絶句。という行動を、私は生まれてはじめてした。

いや、これはもしかしなくても…。

「………私のことが好きなの?」

「ようやく気付いたの?」

間近で笑いながら言われても…。

「うん。多分コレが好きって感情なんだろうね。はじめて持った感情だったから、何だかよく分からなかったけど、キスして気付けた」


私の顔を両手で大事そうに包み込み、彼はとろけそうなほど甘い笑みを浮かべる。

「はじめてキミを見た時から、気になっていたんだ。そしてそのうち、色気を感じてた。コレが恋愛感情なんだろうね」

…告白の割には、甘くはないが…。

「そっ…」

「うん。だから俺と付き合って」

「………まっ、良いわ」

彼の両手に触れ、顔を埋めるようにして言った。

きっと気付かれている。

私の顔が真っ赤になっていることを。

『はじめて』の経験をいっぱいさせてくれる彼に、私は心奪われていた。

―そう、きっとコレが恋愛感情。

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