《MUMEI》
張りぼて
「何で…何で私の部屋にリョウが居るって分かったの?」

修二の恐ろしい告白に圧倒され、今まで黙っていた加奈子がようやく口を開いた。

「私、誰にも言ってなかったのに…何で!?」

「ネックレスだよ。」

「ネックレス?」

「そう、あいつがいつも肌身離さず着けてたアレ。」


加奈子はもう一度リョウを見る。
相変わらず横たわったままだ。
その首から垂れ下がるアンティーク調のネックレス…


「気付いてたのね…」


あの日

修二がイタリアンを作りに部屋に来た日、確かにそれは落ちていた。


「あぁ。ピーンときたよ。悪魔の…おっと失礼、リョウ君のだって。だから仕込ませて貰ったよ、カメラをね。」

「カメラ?いつの間にそんな…」

「加奈子を向かえに行った日だよ。いやぁ、もうニュースに夢中で全然気付かないもんなぁ。」

「じゃあ、あれは私の事が心配で向かえに来てくれたんじゃなかったの…?」

「いや、それは本当だよ。いつ自分の彼女が殺やれるかヒヤヒヤしたよ、ほんと。」

「彼女なんて口にしないで!!」

こんな状況の中、まだ彼氏振ろうとする修二が信じられなかった。

「誰があんたみたいなクズの彼女なんかに…っ!!」

今まで騙されてたかと思うと悔しくて…

自分のせいでリョウが傷付いたと思うと情けなくて…


加奈子は泣いた。





付き合い出して今日迄の二人の思い出が、ただの張りぼてだったかのようにガラガラと音を立てて崩れていく気がした。

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