《MUMEI》
拉致
.




−−−目が覚めたとき、





わたしは、真っ暗な部屋に横たえられていた。



空気は埃っぽく、淀んでいて思わず咳込んでしまう。

身体を動かそうとしたが、後ろ手に縛られて身動きがとれなかった。

必死に目をこらすと、たくさんのコンテナが並んでいて、どうやらどこかの倉庫に思えた。



…………ここは、どこ?



不安を感じながら、許す限りキョロキョロと周りを見回していると、


奥の方から、物音がした。


わたしはビクリと身体を揺らし、身を縮める。


息を殺して、様子を伺うと、

誰かが、話しているようだった。

姿は見えないが、その声は聞こえてくる。



「………!」


「…………?」


「………!?」



数人の男、と、

ひとりの女、の声だった………。



しかも、


日本語じゃない気が、する……。



わざとらしいほど妙にデカいアクセントと、やたら早口でまくし立てる、この怒ったような喋り方は、



…………中国語??



そう思い付いたとき、


今までやかましく会話していた人達が、ぴたりと黙り込み、シン…と静まり返る。

耳が痛くなるような静寂の中、彼らは靴音だけを響かせて、歩きはじめた。


どうやら、こちらへ向かっているみたいだ。


なんだか、嫌な予感がした。


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