《MUMEI》
悪あがきと銃弾
.

わたしはさりげなく足元を見遣ると、すぐ近くに、木の破片が転がっていることに気づいた。

男たちに感づかれないよう、慎重に足をのばし、爪先が木片に触れた瞬間、

渾身の力を込め、一番近くに立っていた男目掛けて、木片を蹴りあげた。

それは男の顔面に向かって飛んでいき、男は一瞬、怯んで腕で顔を庇った。


その隙に、わたしは立ち上がり、

勢いよく駆け出した。


背後から男たちが追いかけてくる。

腕を動かすことが出来ないわたしは、上手い具合に走ることが出来ない。



…………ちっくしょーッ!!


あんなワケわからん奴らに


捕まってたまるかよッ!!



あと、もうちょっとで、出口に着く−−−。



わたしは、重々しい金属製の扉に手をかけた。





−−−その寸前。





聞き慣れない破裂音が、静寂を引き裂くように甲高く鳴り響いた。耳が痛くなるような高音に、わたしはビビる。

それと同時に、火薬の燃える臭いが、鼻先を漂った。

目の前の錆び付いた金属製の扉には、歪んだ鉛の小さな塊が、白く細い煙を吐きながら、ひしゃげてめり込んでいる………。


それを目の当たりにして、


ようやく、その小さな鉛が、銃弾だということに気づいた。


思わず、背筋が凍る。



…………なにこれ?


今、撃たれた??



.

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