《MUMEI》 . 呆然と、その銃弾を眺めているわたしの背後から、 軽やかな女の笑い声が、聞こえてきた。 「バカな真似は止すのね。ケガじゃ済まなくなるわよ」 流暢な日本語で話す、その女の抑揚に、わたしは違和感を覚えた。 …………この声。 まさか…でも、彼女は………。 恐る恐る振り返り、 驚愕する。 漆黒の闇の深淵から、ゆらりと姿を現したのは−−−−。 「春蘭さん…」 留学生の李 春蘭さんが、小さな拳銃を手に、そこにいた。 男たちは、彼女の姿を振り返ると、うやうやしく頭を下げて、一歩ずつ奥へ下がった。 春蘭さんは闇に溶け込むような、黒いスリムなワンピースを身に纏い、ヒールの音を甲高く響かせて、青ざめているわたしの方へ歩み寄る。 目の前までやって来ると、ニッコリとほほ笑んで、言った。 「無駄な抵抗はしないことね、片倉さん」 滑らかな日本語の発音に、わたしは眉をひそめる。 . 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |