《MUMEI》

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「なんでそーなんのよ!?」


突拍子もなく言った彼女に、わたしは反論した。春蘭さんは眉をひそめて、頭の悪いひとね、とため息混じりに呟く。


「あなたとわたしたちは、生きている世界が違うの。表向きはどんなに普通に生活していても、わたしたちには『裏の顔』がある…あなたには、それがないでしょう?」


それは、川崎先生がいつも口うるさく言っていることと、全く同じだったので、わたしは、関係あるかッ!と同じように叫んだ。


「表とか裏とか、関係ないでしょッ!大切なのは、本人の気持ちじゃないッ!!」


正論を突き付けたつもりだったが、効果は無かったようだ。

春蘭さんはかぶりを振り、関係あるわ、と切り返した。


「『裏の世界』に生まれたわたしたちは、結局、その社会で生きていくしかないの。それは逃れられない」


「勝手なこと言わないでよ!逃げようとしたこともないくせに!!」


すかさずわたしが言うと、春蘭さんは少し、ムッとしたような顔をして、

じゃあ聞くけど、と声を強張らせた。


「仮に、このままずっと、あなたと義仲が一緒にいるとして、一体なんのメリットがあるの?」



…………『メリット』?



考えたこともなかった。

わたしは黙り込む。


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