《MUMEI》 メリット. 春蘭さんは、勝ち誇ったような顔をして続けた。 「普通の人間のあなたと裏社会の人間の義仲がともにいれば、いずれ、必ずあなたも危険な目に遭うはず。最初はそれでも良いって思うかもしれないけれど、最後にふたりして苦しむのは、目に見えてるわ」 今日、わたしに拉致されたみたいにね、と笑った。 わたしは彼女の笑い声を聞きながら、なにも言葉が浮かばなかった。 言い返せない。 悔しいけれど、彼女の意見は的を射ている。 黙り込むわたしに、春蘭さんはさらに追い打ちをかける。 「義仲の将来を考えてみて。わたしと一緒にいた方が、絶対に彼のためになる。アジアを制覇出来るのよ?わたしには自信がある。こんな素晴らしいことはないわ」 そうして、彼女は冷たい目を、わたしに向けた。 「あなたに、なんのメリットがある?」 尋ねられて、 わたしは数回、瞬いた。 …………彼女の言う通り、 わたしと義仲が付き合っても、お互いにいいことなんて、ないかもしれない。 彼女と一緒にいた方が、義仲の実家や、義仲自身の将来も安泰なワケだ。 それは、よく、わかる。 . 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |