《MUMEI》
メリット
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春蘭さんは、勝ち誇ったような顔をして続けた。


「普通の人間のあなたと裏社会の人間の義仲がともにいれば、いずれ、必ずあなたも危険な目に遭うはず。最初はそれでも良いって思うかもしれないけれど、最後にふたりして苦しむのは、目に見えてるわ」


今日、わたしに拉致されたみたいにね、と笑った。

わたしは彼女の笑い声を聞きながら、なにも言葉が浮かばなかった。

言い返せない。

悔しいけれど、彼女の意見は的を射ている。

黙り込むわたしに、春蘭さんはさらに追い打ちをかける。


「義仲の将来を考えてみて。わたしと一緒にいた方が、絶対に彼のためになる。アジアを制覇出来るのよ?わたしには自信がある。こんな素晴らしいことはないわ」


そうして、彼女は冷たい目を、わたしに向けた。


「あなたに、なんのメリットがある?」


尋ねられて、

わたしは数回、瞬いた。



…………彼女の言う通り、


わたしと義仲が付き合っても、お互いにいいことなんて、ないかもしれない。


彼女と一緒にいた方が、義仲の実家や、義仲自身の将来も安泰なワケだ。


それは、よく、わかる。



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