《MUMEI》
社長とその息子
O2カンパニーは、その名が示すように、酸素を取り扱う会社だ。


最初は医療用の酸素ボンベのみに力を入れていた会社だったが、最近では一般人向けにも人工的に清浄された空気を販売している。


その技術は、世界一と言われているが


クーの隣にいる社長は、未だに現状には満足していない。


それには、理由があった。


「今日は、オゾン君の体調がいいんですね」

「よくわかったね」

「社長自らいらっしゃる時は、大体オゾン君絡みですから」


社長の一人息子・オゾンは生まれつき肺が弱く、常に酸素ボンベが必要な体だった。


そのオゾンが生活するプライベート空間に、クーは天然の空気を定期的に届けていた。


そして、オゾンはクーの事を気に入っていて、時々空気を運ぶ時以外にも、クーに会いたがる事があった。


前回クーが、オゾンの部屋に空気を届けてから、それほど日は経っておらず


しかも、息子を溺愛する社長自らがクーを迎えに来たのであれば


「今日は、ただの話し相手ですか?」


これしか、目的は無いだろう


クーはそう確信していた。

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