《MUMEI》
・・・・
 「エリザ(わたし)がまだ貴方のことを好いているとでも、一緒に居たいとでも思ったの。
 わたしは復讐を果たすためだけにここにいる、そのために貴方には死んでもらうわ」
 豊かに育った胸の谷間がちらほらとはだけた胸元から見えた。そのときカイルの目に入ったのははだけた白い胸元、そこに輝くペンダントだった。
 蒼いサファイアの輝きに目を奪われ、カイルは唖然とする。
 「・・・・・」
 もう願いは叶わないものだと、カイルは悟った。だが願いが叶わずとも成就する想いがあることもカイルは知った。
 あのペンダントがそれを教えてくれた。
 形あるものに頼らなければ、信じられないものもある。
 重々しく、カイルは身の丈ほどもある長剣を抜き構えた。漆黒の瞳はエリザの胸で輝くサファイアのように澄み切り、潔い。
 「あら殺せるかしら、このエリザ(わたし)を」
 「殺れるさ、エリザを救うためなら」
 もはや一切の迷いはなく、カイルの心身は研ぎ澄まされた剣となった。愛するものを守るため、仇なすものを倒すため。
 ――まだ、持っていたのか。あんな物を大事そうに。
 変わっていないな、オレも、お前も。
 「“竜殺しの魔剣(グラム)”」
 「・・・・」
 白銀に輝く剣身がエリザの身を貫いた。

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