《MUMEI》

アキは昨夜、ジュースを買いに外に出たらしい。

その途中で、電車に飛び込んだという。

おかしな話だが、現場にはおかしなところが無いので自殺ということで片付けられるようだった。

しかしミナは昨夜の夢のことが気になっていた。

まさか、とは思うが、誰にも言えない。

その日、学生の急死ということで、学校は休校となった。

「ミナ、すぐに家に帰りなよ。良かったら、看病してあげよっか? ミナの好きなリゾットとゼリー、作ってあげるよ」

「マカ…。ありがと。でも一人で大丈夫だから」

「そっ…」

マカは寂しそうに答えた。


家に帰っても、寝直す気分ではなかった。

頭には入らないが、無理に勉強していた。

そうすることで、余計なことを考えないようにしていた。

そのおかげか、夜は早目に眠りにつけた。

しかしその夜見た夢は…。




―ユマが何かから逃げていた。一生懸命に。

歩道橋を駆け上り、真ん中まで来た所で振り返った。

すると黒い手が伸びて…ユマの肩を叩いた。

そしてユマの体は下へと落ちた―

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