《MUMEI》 黒き手のひらその夜、フーカはミナの部屋を訪れていた。 両親は仕事で遅くなるらしい。 「自由にしててね」 「うっうん」 しかしフーカはここに来た時から震えが止まらないらしい。 もうすぐあの儀式を行った時刻だ。 ミナはムリに笑みを浮かべ、立ち上がった。 「よしっ、お腹も減ってきたし、下におりてピザでも頼もう! 今の時間なら、バラエティ番組もいっぱいやっているだろうし」 「うっうん…」 顔を上げたフーカだが、すぐに動きが止まった。 表情が恐怖に引きつり、ミナの背後を震える指先で差す。 「あっああっ…!」 どんっ ばんばんっ どどんっ …何かを叩くような音。 ミナはゆっくり振り返った。 まだカーテンは閉めていなかった。 だからはっきりと見てしまった。 窓には黒い手のひらの跡が、音と共に次々と現れる。 手のひらは、赤ん坊サイズから男性の大きなサイズまでさまざまだ。 ミナは眼を見開き、口を開いた。 「いっやあああ!」 二人は部屋を飛び出した。 そのまま家からも、出てしまう。 前へ |次へ |
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