《MUMEI》
眠り王子とのキス
「こんにちは」

明るい声と共に、あたしは病室に入った。

「元気してた?」

けれど返事は返ってこない。

部屋にいるのは一人の青年。

あたしの彼。

でも…もう三年間、ちゃんと話していない。

「まっ、しょーがないんだけどね」

三年前、当時はお互いに高校三年生だった。

同じクラスになって気が合って、彼の方から付き合いたいって言われた。

元々気になっていたから、すぐにOKしたっけ。

でも…あたしは変わってしまった。

イヤな方向に。

明るくて社交的な彼は、とても好かれる存在。

だからたくさんの友達がいて、好意を持つ女の子も少なくなかった。

だから…嫉妬深くなった。

彼を必要以上に束縛したり、しつこいくらいに電話やメールをしていた。

周りからいくら言われても、止まれなかった。

今思えば、よく警察に言われなかったなぁなどと思ってしまう。

そんなあたしを、彼がフッっても何にも言えなかっただろうな。

彼が事故に合ったのは、あたしの誕生日だった。

その頃、彼から話がしたいと何度も言われていた。

何となく、別れの予感がしていたあたしは、今度は逆に距離を取ってしまった。

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